12 幸福論


諸葛亮の性欲の強さは尋常でなかった。

いやらしい事を考えているわけでもないのに勃起するのはちょくちょくで、半勃ちならまだしも、フルボッキとなると、外
見からそれがわかってしまうのではないかと、さすがの諸葛亮も焦りを感じ、数式や、伏兵の置き場を考えたりして
も、数字の8を女性の体と置き換えたり、伏兵の配置が例のフジテ●ビのマークに似た女性器を簡易化したもののよ
うな並びにしてまた想像してしまったりして、ますますの息子の元気っぷりに頭を悩ませる日が続いていた。
伏龍などと呼ばれる彼でも、勃起の原因はそんな単純なものであることが多かった。

家にいるときはよい。
妻、月英に「ちょっとすいません」と言えば、彼女は「またか」という顔をして、協力してくれる。
しかし最近はその行為もおざなりなものになっていて、諸葛亮は夫婦間に亀裂が生じることを心配していた。
このままではいけないと、最近彼は訓練に勤しむようになっていたのだった。


まずは滝に打たれた。
全裸で、男性器中心に滝に打たれるようにブリッヂの体勢で滝に打たれた。
衣類の摩擦からの勃起を防ぐ為に、だ。
普段は身体の線が見えないような大きめの衣類を身につけていた彼だったが、たまにはスリムなパンツもはいてみ
たいと思っていた。
しかし、ひょんなことで元気になってしまう息子の事を考えるとそれはなかなか難しい夢だった。

だが、それを続けるうちに、多少の摩擦での勃起は防げるくらい、息子は強くなってきたのだった。


次はメンタルを鍛えた。
まず頭の中で絶世の美女を想像する。
その美女はいつも薄い絹衣を身につけていて、諸葛亮はゆっくりとその絹衣を脱がせる。
そして適度に熟れたその身体を隅々まで眺め倒してから美しい顔に目をやると…その美しい顔はいつの間にか関羽
に変わっている。
美髯はへそまで垂れ下がっていた。

このような想像を繰り返すうちに、町を歩く美女の顔は関羽に見えるようになるまで鍛え上げられた。

これには、少し問題があって、現実で関羽の顔を見ると、美しい女性の身体を想像してしまう。
という事がしばらくの間続いたが、それにもいつしか慣れ、どちらを見ても気色の悪い髭を脳内で描けるようにまで成
長できた。


そして常に己の性器をいじるように心掛けた。
厠中心にだが、癖になったのか、劉備の前でそれをしてしまい、咎められてからはその行為は控えた。

そして三月程訓練をするうちに、多少のことでは勃起しない立派な息子に育てあげたのだった。


それから諸葛亮はしばらく平穏な日々を送っていた。

だが、最近妻の様子がおかしい。
苛立っているようなそぶりを見せたと思ったら、急にため息をついたりする。
なんだか最近二人の仲はぎくしゃくしているように感じられた。
一難去ってまた一難。せっかく性欲の問題が解決されてきたと思っていたのに、次は夫婦間に問題が生じているで
はしゃれにならない。
諸葛亮は思いきって彼女に聞いてみた。

「月英…」
「なんでしょう」

そんな一言にも刺があるように聞こえるのはきのせいなのだろうか。

「あなたがここのところ何か思い悩んでいるように見えるのは私の思い過ごしでしょうか」
「…さあ…?」
「月英…夫婦間に隠し事があってはいけません。私にすべて打ち明けるのです」
「…」
「月英」

しばらく黙っていた彼女だったが、真剣な眼差しの諸葛亮に負けたとでもいいたげに口を開き発した言葉は
「孔明さま、EDにでもなられたのですか」
「え?」
「以前とは打って変わって私を営みに誘ってくださることが無くなったように思えるのですが」
「………」

…そういえば、訓練をしだしてから、月英とのあちらの方はさっぱりになっていた。
諸葛亮は自分の事ばかり考えて、最愛の妻月英の事を忘れていたのだ。

いや、忘れていたのではない。
以前のはちきれんばかりの性欲を月英は嫌がっていると勝手に思っていたのだ。
多い時は日に三度も。
それが毎日続くこともしばしばあったのだ。
当然、嫌々の付き合いかと思っていた。
しかし、それは思い過ごしだった。
彼女も諸葛亮を求めていたのだ。
愛し合い一緒になった二人なのだがら、当然だろう。
諸葛亮は手を伸ばし、微笑みながらゆっくりと月英の髪をなでた。

「月英…私としたことが。貴女に寂しい思いをさせましたね」
「…孔明さま…」

二人はどちらからともなく唇を合わせ、長く口づけを交わした。
愛する女性を目の前にし、既に息子はばっちり準備OKだ。
やはり自分は月英を心から愛している。
愛あればこその勃起、誰に咎めることができようか。
諸葛亮は月英の衣服に手をかけ、それをゆっくりと脱がせる。
白く透き通るような肌は息子をますます元気づけた。
そして、愛撫の前にもう一度口づけようと月英の顔を見た。



「か、関羽殿!!」



こんなときに訓練の成果が出てしまった。
諸葛亮のご子息は一気に萎え、天井を向いていたそれは、しょんぼりと下を向いた。
しかもいくら払っても掃っても、面前から関羽が消えることはなかったのだ。

「…孔明さま…?」
「…月英…、私に時間をください…」

翌日から諸葛亮は女性の裸体で関羽を思い浮かべるのを抑制する訓練を始めたのだった。


終わり


………なんかすいません