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13 知性 「やあ、諸葛亮」 「ご無沙汰しておりました、司馬懿殿」 「では早速勝負といくか」 「ええ。どこからでもどうぞ」 「ほう。私に先攻を譲ると?」 「もちろん。私が負けるとは思えませんので」 「ふん、まあよい。その余裕が何時まで続くかな?では行くぞ!トマト!」 「早速回文できましたか。侮れませんね、司馬懿殿」 魏の軍司、司馬懿と、蜀の軍司、諸葛亮はたまにこうして顔を合わせては己の知恵を比べあっていた。 始めは自分の考えた軍略を比べあっていたが、どうも決着が着かない。 そのうえ手の内を晒すことになる。 結局行き着くところは此処ではなかろうかと、現在二人はあうたびにしりとり合戦を繰り広げていたのだった。 「とうもろこし」 「ふっ…愚かな。しんぶんし!」 「またしても回文…やりますね、司馬懿殿…」 先の回文トマトは意味のない物にも聞こえた。 諸葛亮もそう感じていたが、褒め、持ち上げ、司馬懿にわざと上に立ったと思わせる作戦だったのかもしれない。 しかし今回のしんぶんしは違う。 もう一度、頭にしの付く言葉を探さなくてはならない。 「しかばね」 「ねこ」 「コンドル」 「………る、ルビー」 しりとりで、「る」は鬼門であることは承知の通りだろう。 此処で司馬懿に「る」を回すのは、やはり諸葛亮が一枚上手だったか。 「ビー玉」 「勾玉」 「マグマ」 「………ま、マイケル!」 「人名は禁止ですよね、司馬懿殿」 「くっ……」 諸葛亮に鬼門の「る」を回したいがために焦った司馬懿はミスを犯した。 そのまえの二人のやり取り、ビー玉からの勾玉、マグマへのコンボは見事なもので見ごたえがあったが、しかしそれ が焦りを呼んだのかも知れない。 やはり司馬懿は伏龍諸葛亮には敵わないか。 ×が一つ司馬懿に付いた。公式しりとりルールでは×が3個付くとその瞬間から敗者となるのだ。 「マカロニ」 「ニュース」 「するめ」 「…………ふふふ…………ははは……」 諸葛亮は笑い出した。 「終わりです。司馬懿殿。めばる!」 「!!」 再び「る」を繰り出された司馬懿。 「る」はしりとりでもっとも難しいとされている文字だが、先程ルビーを出した司馬懿。 さてどうする?という顔でそれを見詰める諸葛亮。 るで思い付くのは「ルミ子小柳」くらいしかないか。 しかし、人名のうえに、姓名が逆になっているところが痛い。 「………ルーラ………」 「はい?」 「ルーラだ。知らんのか?ワープできる呪文だ」 「………存じ上げております」 ここでまさかルーラが出てくるとは。 司馬懿と諸葛亮ががルーラを知っていたことにも驚きだが。 「…ラウドネス」 「残念だ、諸葛亮。以前私が「レッドホットチリペバーズ」を出した時にバンド名は無しということになったのを忘れた か!?」 よほど動揺していたか、諸葛亮がミスをおかして1対1の同点となった。 そして諸葛亮の動揺は思っていたよりも深刻だった。 続いて出した言葉が「ラジコン」2連続で痛恨のミス。 最後に「ん」がついて何が悪いと思われがちなしりとりというこの勝負。 しかしもちろん、「ん」で終わったら「ん」で始まらなければいけない。 「ん」で始まる言葉など無い。 「んこ」くらいだ。 いや、「んこ」は「うんこ」の省略型なのだからアウトだろう。 「ンガンダ」。 いや、「ンガンダ」ではない。「ウガンダ」だ。しかも人名でまたしてもアウト。 サザエさんがピーナツを喉に詰まらせた時の音「ンガグッグ」ももちろんアウトだ。 そして、二人の戦いはまだ続いている。 諸葛亮は×二つで負け戦にリーチをかけた。 「ラクダ」 「ふふふ…諸葛亮、私の勝ちだ!ダンボール!」 「………司馬懿殿。私はまだ勝負を捨てておりません。ルーレット。いかがです。「る」については大分勉強して参り ました」 「な、なにぃ!ではとんび!」 「ビーチ」 「チェーン!あ」 「あー。残念」 これで二人ともリーチを迎えた。次に×がついた方が敗者となるのだ。 バツゲームがあるわけではない。プライドの問題だった。 「ちくび!」 「やりますね。ビール!」 「なにぃ!ルール!」 「ルーズ!」 るって意外とあるじゃないか。 「ズロース!」 「スタート!」 「トマト!!あ」 「…今回は私の勝ちのようです。しかしいい戦いでした。」 「悔しいが仕方がない。私の負けだ」 「また戦りましょう」 「ああ。また戦ろう」 一度言った物を二度言ってはいけないルールで司馬懿は負けた。 しかし二人は満足していた。 そして固く固く握手をしたのだった。 その日二人は別れてから、しりとりの勉強により一層勤しんだのであった。 終わり 色々と突っ込みどころは多いと思いますが、どうぞ見逃して下さい ウガンダさんの御冥福をお祈りいたします。 戻 |