6 がんばれ伏犠先輩


先日のショッキングな出来事からいまいち立ち直れずにいた、伏犧先輩。
そんな伏犧先輩に左近くんは声をかけました。

「伏犧先輩、いい話持ってきましたよ」
「ほう、なんじゃ?」
「実は、合コンのお誘いがかかったんですよ。一緒にどうですかい?」
「よろしくお願いします」

 即答した伏犧先輩。
左近くんは、これで少しは傷が癒えるといいなと思っていました。

「面子はどんなもんじゃ」
「ええ、先日紹介した殿からお声が掛かったんですよ」
「あの、顔のきれいな?」
「そうです。それから、張角さんです。俺と殿を入れて四人というお達しでしたんで」
「思いきった人選じゃな、左近」
「自分でもそう思いましたが、今回のことで(オロチ再臨)せっかく仲良くなったんでね」
「そうじゃな、人の繋がりは大切にせんといかんな」


その翌日、伏犧先輩と左近くん、それから三成くんと張角さんは駅前の笑笑で女子四人と向かい合って座っていまし
た。
女子四人は皆さんとてもかわいらしくって、男性軍は少し浮足立っていました。

「じゃあ、自己紹介から初めてみますかね。主催の殿からお願いしますよ」
「そうだな。石田三成だ、よろしく頼む」
「硬いですね、殿。じゃあ次、俺、島左近です。得意な物は軍略です」
自分だって硬い(?)のを棚に上げて自己紹介が始まりました。
「じゃ、伏犧先輩どうぞ。」
「わしはもずく酢とホッケ、おしんこが好きじゃが、誰か頼んでくれたかのう」
「そんなおじいちゃんみたいなこと言ってないで、自己紹介ですよ」
「お、そうじゃな。伏犧でーす!ヨロロ〜」
「ちょっと、キャラ違いすぎますよ!」
「わはははは、まあええじゃろう。この方がもてそうじゃしな」
「つか、もう戻ってるじゃないですか!」
「漫才はいいから早く進めろ」
三成君から的確なツッコミが入って左近君は「じゃあ張角さんお願いしますよ」と速やかに進行を再開しました。
「神の御加護があるように、汝らに黄巾党に入信することを奨めるぞょ」
「…この場でそれはヤバイですね。表でやってもらえますかい」
張角さんは渋々入信者を募るのを諦めました。

そんなこんなで楽しく会は進み、盛り上がってきた頃、伏犧先輩は左近君に耳打ちしました。
「わしの前に座っておる●×ちゃん、かわいいのう。なんとかお近づきになりたいんじゃが、良い策はないか、左近」
思ったより女の子好きな伏犧先輩に左近君は少し笑いながら
「ありますぜ、こんなこともあろうかと、策を仕込んで参りやした」
そう言うと左近君は上着の内ポケットから三本の割り箸を取り出しました。
「この三本の割り箸には仕掛けが施されていましてね、これから始まる王様ゲームで俺がこの割り箸を入れて、王様
を引きます。残りの二本を伏犧先輩と●×ちゃんが引くように仕掛けて、後はお察しの通り………」
「王様の左近がわしと●×ちゃんがチッスをするように仕組んでくれるのじゃな?」
「まあ、キスじゃなくともいいんですが、その辺は伏犧先輩のお好みで…」
「チッスじゃな。チッスに勝るものはないのう」
「わかりましたよ。じゃ俺が吹っかけますよ?」
「ああ、いつでもよいぞ」

「王様ゲーム!!」左近君がそう叫び、それは始まりました。
そして思惑通り、左近くんの手の中には王様の印しの着いた割り箸が握られていたのでした。
『王様だーれだ!』
「俺ですね」
左近君は割り箸を高々と挙げ、まるで偶然のような顔をしましたが、もちろん計算通り。
ちらと、隣の伏犧先輩を覗くとニヤリと笑いながら割り箸に書かれた一番の文字をこちらに見せてきます。これもまた
計算通り。

「…そうですねえ、じゃあ一番と〜三番がキッス!!」
『えー!』というお決まりの黄色い声の後、皆が一斉に『一番だあれ!』と言いました。
「はーい(^o^)/!」
まるで↑の顔文字のように嬉しそうな顔で伏犧先輩は返事をして、手を挙げました。
『三番だあれ!!』
「我が三番じゃ」
伏犧先輩の横で張角さんがゆっくりと手を挙げました。



翌日、伏犧先輩と左近君はいつもの屋上にいました。
「伏犧先輩、昨日は男らしかったですね」
「ああ、そうじゃな。誰かさんのせいで、天国から地獄に突き落とされたわ」
「いやあ、まさか張角さんが三番引いちまうとは。予想外でしたよ。俺の軍略味わえずじまいでしたね」
「そうか、そうじゃろうな。まあ昨日の事は忘れることにするわ」
「熱いくちづけでしたよ。かっこよかったです」
「……」
「伏犧先輩、あんまり怒ってないみたいで安心しましたよ。………あ、まさか、伏犧先輩………」
「わはははははは!そのまさかじゃ!わし、昨日の帰り●×ちゃんのメアドゲットしちゃったんじゃもんね!」
「やりますねえ!なんだかコソコソしてると思ったら!」

その時『ピロリロリーン♪』 伏犧先輩の携帯電話が鳴りました。

「お! 早速●×ちゃんじゃないんですか?」
「かもしれんな」
ニヤニヤしながら携帯を覗きこむ伏犧先輩。
しかし、その表情はだんだん雲ってきました。
そしてがっくりと肩を落とし、その携帯画面を左近君に見せました。



「昨日の汝の唇が忘れられぬ。またお会いしたく候  張角」


終わり


頑張って!伏犧先輩