5 続・伏犠先輩恋の噂
女カさんにカチカチに凍らされた伏犧先輩と左近君でしたが、しばらくすると溶けてきて、また話し始めることができま
した。
「参りましたね、伏犧先輩」
「ああ、散々な目にあったわ」
もちろんその頃には女カさんはその場からいなくなっていて、二人は溶けた氷が濡らした洋服を温かい所で乾かして
いました。
「本気で怒ることないですよね」
「あいつの悪いところじゃ」
「しかし今思い出した噂なんですが、女カ先輩って一年の太公望と付き合ってるんじゃなかったでしたっけ」
「……え?」
「そんな噂を聞いたことがありますよ」
「…嘘じゃろ?あの坊主と?そ、そんなのただの噂じゃ…」
「お?伏犧先輩、意外に真剣に女カ先輩の事を?フォー!!」
「古いわ。今はグーッじゃろ」
「…じじくさいわりにやりますね」
「まあ、それはいいわ。で、その噂の元はどこじゃ?」
「殿ですぜ。」
「殿とは?」
「この学校一年の石田三成という御仁です。会ってみますかい?」
「そうじゃのう。会ってみるか」
程なくして伏犧先輩と左近君は三成君に会いに行きました。
「伏犧先輩。殿ですぜ」
「何故殿なんじゃ」
「まあそれはいいじゃないですか。殿、女カ先輩と太公望が付き合ってるって、誰に聞いたんですかい?」
「お前は何故後輩に敬語なんじゃ」
「まあまあ」
「曹丕に聞いた。兄貴(曹操)が女カ先輩ファンクラブの会長だろう」
もうなんでもあり設定になってしまった感が否めないオロチ高校。
でもそんなことどうだっていいじゃないか!
三成君は同じクラスの曹丕君を連れてきてくれました。
「本当だ」
「何故じゃあ!!何故よりにもよってあの坊主と!!」
「落ち着いてくださいよ。らしくないですぜ」
「女カ先輩は年下趣味で、太公望はストライクゾーン、しかもど真ん中に入ったらしいな。兄が言っていた」
「年下趣味ぃ?」
「母性本能をまさぐられた。そう言っていたらしい」
「ちょっと待ってくださいよ。曹操さんはなんで女カさんのことそんなに知ってるんですかい。」
「兄は女カファンクラブ会長、そしてメル友だ」
「メ、メル友!?わしはメアドも知らんのにか!?」
「兄は口だけは達者だからな。うまく聞き出したらしい。そのうえ筆まめだからな。なんか聞かれると答えたくなっちゃ
う的なメールが得意らしいぞ」
「ど、どうやるんですかい、そのメール」
「私は知らぬ。私にはシンがいる」
「聞いてないぞ、曹丕」
「そうか」
仲の良さそうな二人に礼を言ってから、伏犧先輩と左近君はまたいつもの屋上に向かいました。
左近君は制服のポケットからショートホープを取り出して火を付けました。
「コラ!タバコなんて吸いよって!」
普段ならそう注意する伏犧先輩 。
でも今日はちょっと違いました。
「わしにも一本くれんか」
「ええ、どうぞ」
左近君は伏犧先輩に一本差し出して、空になった箱を手の中で潰し、ポケットにしまいました。
「…伏犧先輩…泣いてるんですかい?」
「煙が目に染みただけじゃ」
そう言った伏犧先輩は青く晴れ渡った空を眺めてがはははと豪快に笑いましたが、目には哀愁が漂っていたのでし
た。
「伏犧先輩」
「なんじゃ」
「女カさんが太公望と付き合ってることと、女カさんが曹操さんとメル友なの、どっちがショックだったんですかい」
「………どちらも…じゃが、どちらかといえば後者じゃな」
「…俺が伏犧先輩と同じ立場でもそう言ったでしょうよ。」
「………左近、今夜は飲むか」
「いいですね。朝まで付き合いますぜ」
「すまんな、左近」
「いいんですって、元気出して下さいよ、伏犧先輩。ほら」
左近君はそう言うとさっき潰したショートホープの箱をポケットから取り出して手の平に乗せ
「こんなでっかい鼻クソ取れちゃった」
粋に伏犧先輩を元気付けようとする左近君に伏犧先輩は
「ありがとう、左近。ちっとも笑えんが嬉しいわ」
そう言って優しい眼差しで左近君を包み込みました。
「自分、不器用っすから」
左近君は恥ずかしそうに、鼻クソをまたポケットに戻し、少し笑ったのでした。
高校生は酒もタバコも飲んじゃいけないよ?
次回は「未定」です。
お楽しみに!
まさかの鼻クソオチ
なんだかちょっと悲しい話しになってしまった。ゴメーン
|